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2005年10月の記事

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ネットでよく見る質問系、思い切って答えてみました。


MONSTER本編(原作かアニメかは問いません)のネタバレなので、未見の方はお気をつけください。お題上、痛い回答もあるので、寛容な方だけどうぞ。


Q1:あなたのHNは?

どんぐりです。


Q2:MONSTERにはまった理由は?

もともと漫画に興味はあったんですが、そのまま読まずにアニメから入りました。ディーターが登場する辺りで原作が気になって借りて読み始め、MONSTER世界にどっぷり浸かるように。一番の魅力はテンマと双子の運命的な絆ですね。この三人の物語にはまりました。


Q3:「MONSTERヲタクだなぁ」と実感したエピソードは?

うーん、なんでしょう。雨にも負けず野球にも負けず、アニメ全話を録画できたことですかね。あと夢にテンマとヨハンが出てきました。普段もMONSTERのことばかり考えてるのに、夢にまで…。


Q4:作中で最も愛を感じる人物を挙げて下さい。

テンマ。大好き。


Q5:あまり目立たなかったけれど、愛着の湧くキャラクターは誰ですか?

シューマン・ペトラ夫妻とか、「フライハムへの旅」に出てきた夫婦とか、モグリの医者だったベトナム人の女の子とか、テンマと旅先で交流した人々に愛着があります。


Q6:テンマについて思っていることを述べて下さい。

人を殺すための旅をしながら、それでも多くの人を救ってしまうテンマが好きです。格好良くてどこかかわいい、それがテンマ。


Q7:エヴァについて思っていることを述べて下さい。

すっかりいい女になったけれど、彼女の変貌は素直に嬉しい。マルティンのお墓(ってどこにあるんだろ…)にお参りしていたりするのかな……?


Q8:ニナ(アンナ)について思っていることを述べて下さい。

美人で才媛、合気道も強いなんてうらやましか…! 怪物じゃなくなった(と私は思ってる)ヨハンとどんな会話するのか見てみたい。


Q9:母アンナ(ヨハンの母親)について思っていることを述べて下さい。

双子に残酷なことをしたと思うけれど、報いを受け、精神を病んでしまった彼女はただ痛ましい。もしボナ博士のラブレターを知ったら、どう思うのだろう?


Q10:ヨハンについて思っていることを述べて下さい。

恐ろしい仮面を被らざるを得なかったかわいそうな子供。
幼少の時はともかく、大人(の外見)になっても軽やかに女装しちゃう(そして誰も男と疑わない)アンナさんがステキです。


Q11:ルンゲについて思っていることを述べて下さい。

ルーエンハイムでの警部はメチャメチャ格好良いのですが、中盤までの勘違いさん☆な彼も好きだったりします。図らずもテンマに助けられてしまった話が好き。ルン毛という当て字も好き…。


Q12:グリマーについて思っていることを述べて下さい。

作り物といってもグリマーさんに合うのはやっぱり笑顔。アニメではカットされてしまったけれど、養護施設の子供達がそろってニコニコしたグリマーさんを描いていたところが好きです。あの子達はグリマーさんの死を知っているのかな…。


Q13:フランツ・ボナパルタについて思っていることを述べて下さい。

テンマ、ヨハンとともに「MONSTER」において皮肉を体現したようなひと。知能は高くても、本当に馬鹿で愚かで哀れな人なんだと思います(ヒドイ言いよう)。大切なものに気づくのが遅すぎるよボナ博士。とはいえ悪党ボナ博士もほのぼのポッペさんも大好きなんですけどね。実は甘党(ケーキ好き)というところがツボ。あの無表情でほおばるんですか博士。


Q14:ディーターについて思っていることを述べて下さい。

何かあるたびにテンマの名言を口にするところがいい。オーバーオール姿が一番かわいいかな。後半、出番が減って悲しかったです。


Q15:ロベルトについて思っていることを述べて下さい。

アニメ感想でも書いたように普段はコワイウザイキモイのですが……ココアのことを知ると彼もかわいそうな人だったのかなと。しかしなんで出てくるたびにヤッ(ry


Q16:守ってあげたくなるキャラクターは誰ですか?

やっぱりヨハンですかね。心は子供ですから。小さい頃の彼を「おーよしよし」と頭をなでて抱きしめてあげたい。さっそく瞬殺されそうですが。


Q17:友達に欲しいキャラクターは?

ニナとロッテかな。


Q18:できることなら敵に回したくないキャラクターは?

いやー「MONSTER」に登場するほとんどのキャラですね。みんな頭いいから敵に回すと大変そう。


Q19:作中で一番怖いと思ったキャラクターを挙げて下さい。

ゼーマン警部ですかねえ。あの爪の拷問はイヤすぎる。


Q20:現実にいたら嫌だと思うキャラクターは?

えーと誰でしょう。ああ、ニナに合気道を教えていたスズモトセンセイ(原作のみのキャラです)かな。実際にあーゆー人はたくさんいると思うけれど、だから余計にあの顔はムカツクです。ニナさん、こてんぱんにやっつけちゃってください。


Q21:ヨハンみたいな兄は欲しいと思いますか?

お兄ちゃんかぁ。「全部○○○のものだよ」なんて言われるのもオツなもんですね。でも弟や自分の子供、甥っ子になってくれたほうがいいかも。


Q22:作中で最もお似合いのカップルは誰だと思いますか?

カールとロッテかな。ロッテがふられた(と思った)後にいろいろと一悶着あったんだろうけど、なんだかんだいって仲のいい二人。
そして…テンマ×ヨハン、ヨハン×テンマ、テンマ×ニナ、ニナ×ヨハン、この三人絡みは全部OKだったりします。節操なさすぎです。三人萌え万歳。


Q23:テンマについて未来予想をして下さい。

ぜひともヨハンとニナとディーターを養ってください。そしてあなたも幸せになってください。みんなに肉じゃがや親子丼を振る舞ってあげるとなお嬉しい。


Q24:エヴァについて未来予想をして下さい。

キッチンコーディネイターとしてバリバリ仕事をこなしてそう。今まで男に依存して生きてきたエヴァだけれど、今の自立した彼女は本当の意味でモテるだろうな。


Q25:ニナ(アンナ)について未来予想をして下さい。

辣腕弁護士として名を馳せるんだろうなぁ。実際、能力はヨハンと同じくらいでしょうしね。ヴァーデマン弁護士と競ってほしいかも。


Q26:母アンナ(ヨハンの母親)について未来予想をして下さい。

うーん、この人は難しいなぁ。思い切ってテンマさん一家(サザエさんですか)が引き取って一緒に暮らすとか。ヨハンもニナも今の弱々しい彼女を見たら許す(受け入れる)ような気がするのですよ。


Q27:ヨハンについて未来予想をして下さい。

もちろんテンマさん一家の一員ですよ。日本式のちゃぶ台囲んだにぎやかなテンマ家にちょっと戸惑うヨハンなんてどうですか。
今まで心が凍てついていたヨハンも、彼なりの幸せを見つけてほしいもんです。


Q28:ルンゲについて未来予想をして下さい。

とにかく厳しい教授だけれど、受講生の中には密かにマニアックなファンがいそう。あと孫に会うときだけ、あの釣り目がタレ目になると予想。「少年アシベ」の完治君みたいに。


Q29:グリマーが生きるはずだった人生について予想してみて下さい。

あのままボナ博士や東側の犯した罪を調べ続けていたでしょうね。それが終わってからもジャーナリストとしてあちこちを飛び回ってそう。そして時々ピクニックをしてうまいビールを飲むんですよ。で、いつだって子供達に大人気で。考えていくと悲しくなるなぁ…。


Q30:フランツ・ボナパルタが生きるはずだった人生について予想してみて下さい。

この人も難しいな…。過去の罪状を全部明るみにしたとしても、罪に問われるのかどうか。ほとんどは旧体制下のチェコスロバキアでの出来事だし、もうドイツに亡命していますしね。本当にどうなるんだろう。もし恩赦か何かで刑に服さないのであれば、ルーエンハイムをもう一度立て直して、オーナーを続けるとか? ヨハンやニナ、母のアンナにも会ってけじめをつけるべきかも。


Q31:ディーターについて未来予想をして下さい。

そりゃーもちろん、サッカー・ドイツ代表でしょう。ポジションはMFかなぁ。最終話のリフティングを見る限り、ボールコントロールが上手そうなので。今だとU-17世代くらい? 来年のドイツW杯には間に合わないだろうけど、次の南アフリカ大会なら出場できるかも?


Q32:ロベルトって結局、生きていると思いますか?

うわあ……ありえないですって。生きていたら彼こそ本当の怪物ですな。


Q33:最終回について一言どうぞ。

人によって解釈は分かれているけれど、私は希望の見えるエンドだったと思っています。でもやっぱり、ヨハンのその後はしっかり描いてほしかった気も。あの終わり方のほうが「MONSTER」らしいとは思いますけどね。


Q34:結局、MONSTERは何だったと思いますか?

人間ですね。


Q35:MONSTERはホラーだと思いますか?サスペンスだと思いますか?

サスペンスかと。


Q36:作中で最も印象に残った言葉を教えてください。

ボナ博士の台詞「人間はね……何にだってなれるんだよ」。
まさにこの作品のテーマを表している言葉だと思います。


Q37:印象に残ったエピソードを教えて下さい。

肉じゃが、親子丼、サンドイッチ。フライハムなどの心の交流エピソード。あとはボナ博士関連。
追記:一番大切な図書館を忘れてました。手が震えて撃てないテンマと、スコープ越しのヨハンの表情が好きです。


Q38:どうでも良いような些細なことだけれど、どうしても気になってしまう事はありますか?

チェコにいる時はみんな何語で喋ってたんだろう…。チェコ出身の双子はともかく。グリマーさんはチェコ語がわからないようだったけれど、スークやランケ大佐と普通に会話しているし、テンマやルンゲ警部だって。ドイツ語を話せるチェコの人も多いのかな?


Q39:『もうひとつのMONSTER』は読みましたか?読んだ方は感想もどうぞ。

はい、読みました。ボナ博士はアンズ入りケーキが好きだったというのが一番の衝撃でした……。そんなことまで調査していたランケ大佐に感謝とともに爆笑しましたよ、ええ。


Q40:『MONSTER解体新書』を読んだことはありますか?

いいえ。読んでみたいなぁ。今も売ってるのかな?


Q41:『ダ・ヴィンチ』2002年4月号のMONSTER特集は読みましたか?

いいえ。雑誌だからもう読めないですね…。


Q42:最近、ビッグコミックオリジナルで連載の始まった『PLUTO』は読んでいますか?

単行本を2巻まで購入しました。ノース2号の切なさ、アトムのかわいさといったら…! この作品もMONSTERと同じスタッフでアニメをつくってほしいですね。


Q43:ちなみに、MONSTER関連サイトを探してみたことはありますか?

はい。絵もSSも考察も楽しみました。


Q44:おすすめのMONSTERサイトがありましたら、教えてください。

「三匹のかいぶつ」さん(ヨハンへの愛が行間からひしひしと)、
「困憊ヒーロー」さん(独特のMONSTER絵とアニモン感想が素敵)、
「薄暮」さん(シンプルで叙情的なグリマーさんとテンマの絵がたまらない)、
「東京の空」さん(魅力全開のテンマ絵にほれぼれ)…。
他にもこっそり見せていただいているサイトさんが多くあります。


Q45:MONSTERにまつわるちょっとした自慢をお教え下さい。

自慢ですか。ヲタクと実感したのは?の問いと重なるけれど、アニメ全話の録画ができたことくらいですかね。あ、アニメ感想がどこよりも長文なこと。最高5000字以上ですから!(長すぎです)


Q46:MONSTERを身近な人に勧めたことはありますか?出来ればその結果も教えてください。

家族二人に。最初にアニメを見せて、その次に漫画を。漫画はむさぼるように読んでいましたが、私ほどはハマってくれなかった…。


Q47:「これがMONSTERのテーマソングだ!」と言える曲はありますか?

globeの「Wanderin' Destiny」。もとは「青い鳥」というドラマのために書き下ろされた曲ですが、もう歌詞がテンマと双子を歌っているようにしか思えません。


Q48:MONSTERは将来映像化されるそうです。あなたが希望する映像化の方法を教えてください。

アニメは言うまでもなく最高の出来でした。
予定されている映画のほうは正直不安が。もともと実写に向いている作品だとは思いますが、ちゃんと原作の持つテーマ、雰囲気を出せるのかどうか。役者の選考も難しいですし。「ロード・オブ・ザ・リング」のように3部作で作られるといいなあ。


Q49:あったら絶対欲しいMONSTERグッズは?

グッズというとちょっと違うけれど、ゲームかな。サウンドノベルの「街」のように話の途中でそれぞれのキャラにザッピングできる(主人公を変えられる)とか。EDはもちろんマルチエンディング。死にネタあふれるバッドEDから、世界観を壊すギャグED、テンマさん一家誕生のグッドEDまでファンの妄想を一挙に網羅。うわぁステキ。
あとはボナ博士の絵本。コミックスの限定版に「なまえのないかいぶつ」があったそうですが、はまるのが遅かった私は当然持っていないので正式に出版してほしい。


Q50:最後に、MONSTERへの思いをご自由にどうぞ。

アニメの1話目を観た時から予感はあったものの、ここまでハマるとは思いもしませんでした。
「君のすべてを食い尽くすために見ていた。だが逆に君のすべてが私を侵食した」……
まさにこんな心境。
人間の業を描き出し、素晴らしさを謳いあげた傑作です。


■MONSTERファンに50の質問 配布元:
「Let's stay together」さん

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[MONSTER]原作・キャラ語り | 21:43:42 | コメント(4) | ▲TOP

その1ではアニメ全体の感想やキャラクター別の感想を書きましたが、その2ではヨハンとラストシーンを中心に考察していきたいと思います。


以下はネタバレですので、未見の方はご注意ください。


■ヨハンの覚醒


最終話の穏やかな空気が一変した、ヨハンの告白シーン。
ネットの感想を見ると、アニメで初見の人ほど、このシーンを怖いと感じたようで。私も原作で初めて読んだ時はページ見開きヨハンに度肝を抜かれましたが、今では怖いというよりも哀しいといった感情のほうが勝っています。私にとってこのシーンは悲痛以外の何物でもありません。


突如目を覚ましたヨハンと、目を見開いたまま動けないテンマ。ドクン、ドクンと響く心臓の音はたぶん、ヨハンとテンマ二人の音でしょう。
この時、おそらく二人はあの終わりの風景の時のように同調していると思います。荒野の風景をテンマに見せた時と同じように、過去の記憶を直截的にテンマに見せているのです。
(この解釈だと超能力といった類の力になってしまいますが、洗脳に秀でたヨハンがこういった能力を持つのも不思議ではないのかもしれません。ロベルトにココアの思い出をよみがえらせた彼ならあるいは…)


だからあの過去の映像はテンマの白昼夢ではなく、明らかにヨハンの意思が入っていたと思います。夢オチなどでは決してなく、ヨハンはテンマにメッセージを送っているのです。
「Dr.テンマ……あなただけに聞いてほしいことがある」
ニナにも誰にも言えず、今まで心にしまうだけだったあの記憶。終わりの風景を共有し、二度も命を救ってくれたこの人ならわかってくれるかもしれない。そしてあの記憶を話した後も、それでも変わらずに母親に愛されていたとやはり言うのだろうか……?
そんなヨハンの思いが伝わってくるのが、この一言でした。


■母親の選択


ヨハンがすべてに対して虚無感を抱くようになってしまったのが、母親が双子を選択したこの瞬間。
このシーンに、ヨハンが最初の殺人を犯した時や「なまえのないかいぶつ」の朗読の時にかかっていたあの曲を持ってくるとは思いませんでしたが、ざらざらした映像と愁いのある曲が、この残酷なシーンをより悲愴なものにしていました。


その1でも触れましたが、こちらでも一応。
最初は子供達を連れて行かれないように必死だった母親が、「これは実験だ。どちらかを残してどちらかを連れて行く」とボナパルタに言われた途端、選択をしてしまったのはなぜでしょうか。
せめてどちらか片方が助かるのならと考え、ニナを差し出し、ヨハンを残したとも考えられますが、私は母親が片方の子を助けるためにやったとは思っていません。


母親は自分の子を怪物にしてボナパルタへ復讐させるため、自分と同じ女であるニナを差し出したのでしょう。ボナパルタの「これは実験だ」という言葉を聞いた瞬間、母としてではなく復讐心の塊のような人間に陥ってしまったと。
「私は許さない。私の中でどんどん大きくなっていく子供達が、必ずあなたに復讐する」
彼女はこの言葉を実行し、自分の子供を復讐の道具に使ったのです。
結果としてヨハンのほうが復讐を果たしたわけですが、バラの屋敷に連れて行かれるほうが怪物になると考えるのが妥当な気がします。


故に母親はヨハンとニナ、二人の区別がちゃんとついていたと私は思っています。
「こっち……いえ……こっち」は、どちらを差し出せば復讐できるのかを逡巡した結果なのであって、双子がどちらなのかわからなかったわけでも、二人を間違えたということでもないはず。
子供達を選別するという残酷な罪を犯した母親ですが、双子のどちらがどちらかわからない、そこまで愚かな人間だとは思えないのです。


シューバルトがヘレンカ(マルゴット・ランガー/カールの母)のことを尋ねに、三匹のカエルで双子の母親と語り合うシーンがあります。母親の傍らで二人の話を聞いている双子は、まだ男の子、女の子とわかる姿でした。
母親は最初からヨハンに女装させていたわけではなかったのですね。
(ちなみに、他人が容易に訪ねて来たことに危機感を抱いた母親が、この時をきっかけにして双子に同じ格好をさせるようになったと思っています)
そんなふうに双子を男の子と女の子、別々であると認識して暮らしていた時期があったわけで、母親が双子を間違えることがあったとは思えません。これは本当に個人的な解釈ですが。


それでもヨハンが、自分を助けようとしたのか、ニナと間違えたのか、母親に対して疑念を抱いているのは仕方のないこと。
母親は実験によって双子の名前を忘れていました。そのせいで子供達に対して「こっち」という言い方しかできなかった。
また、ボナパルタから逃げ隠れるため双子と思われないようにヨハンをニナと同じ格好にさせていたことも大きいでしょうね。
名前も姿かたちも、何ひとつ自分らしいものを持つことを許されなかったヨハン。母親が自分と妹を個別に認識できていたかなんて、彼にはわかりようがないのです。


母親から選択されたことで、自分のすべてを否定されたように思ってしまったこと。
母親が自分とニナ、どちらを愛していたのかわからないこと。
あるいはどちらも愛していなかったかもしれないこと……。
あの選択によって、ヨハンは自己のアイデンティティを失いました。
さらに、ニナが引き渡された後、母親もすぐにどこかへ連れて行かれ(母親はボナ博士と一緒だった?)、三匹のカエルでひとりぼっちになったヨハン。彼が母に捨てられたと思うのは必然だったのでしょう。


■「いらなかったのは、どっち……?」


「母さんは僕を助けようとしたの……? 僕と妹を間違えたの? どっち……? いらなかったのは、どっち……?」
「君は母親から愛されていたんだ」と言うテンマに過去を見せて、「これでも本当に愛していたと言えるの?」と突きつけるかのように、テンマに母の愛情を問うヨハン。
ヨハンが発したこの言葉、哀しいと同時に、なんて無垢で純粋なんだろうと思いました。その口調もあって、まるで小さな子供のよう。
だから私にとっては、ヨハンはかわいそうな子供です。怖い仮面を被った……被っていた小さな子供。母親に選択された時から、彼の心はずっと時間が止まったままだったのでしょう。


その止まっていた時間を動かしたのがテンマです。もう一度救ってくれたテンマだからこそ、初めて自分の思いを吐露することができた。
それでも夢という曖昧な形でしか伝えられなかったのは、怖かったからでしょうね。ヨハンはテンマの反応と答えが恐ろしかったのではないでしょうか。


けれど実際、夢としてではなく、現実にこの言葉をぶつけていたら、テンマはなんて言ったのでしょうね。あんなむごい過去を見せられて、すぐに言葉が見つかる人間はそうはいないでしょうから……。


■本当の怪物


本当の怪物とは、人間そのもの。
他作品でもよく見るテーマではありますが、結局そういうことなんだと思います。
ヨハンも母アンナもフランツ・ボナパルタも、そして511キンダーハイム出身者達も、みんな人間だからこそ起きた悲劇です。


母への絶望と自己の否定、ニナへの罪悪感から怪物になったヨハン。
ボナパルタに憎悪を募らせるあまり、狂気に囚われてしまった、母・アンナ。
他人を自分の思い通りに支配して、神になる欲望を抱いたボナパルタ。双子の母親に恋して欲望を放棄したものの、その恋心からバラの屋敷の惨劇を引き起こすことに。
幼少時に洗脳を受け、名前と記憶をなくした511キンダーハイム出身者達。彼らは誰よりも感情を欲していた人間だった。


すべては人間がもたらしたこと。この一言に尽きると思います。


■消えたヨハン


人によって様々な解釈があるのがラストのヨハンの行動。
窓が開いていたことから飛び降り自殺したと推測している人もいれば、母親を殺しに行ったという人、そもそもヨハンは存在しなかったという人も。
もちろんどの予測もなきにしもあらずでしょうが、どれも救いがなく、何よりテンマやヨハンが葛藤したあの日々は何だったのかということになるので、私は別の予想です。


ヨハンは母親に選択された記憶を思い出してから、母に捨てられたのだとずっと思っていました。それなのにテンマから信じられない一言が。母親が双子を愛し、本当の名前を付けていたと言うのです。ヨハンは耳を疑ったはず。だからこそテンマに選択の記憶を見せてまで母親の愛情を問うたのです。
結局テンマから答えを聞くことはしなかったヨハンですが、テンマの言うことが本当なのか真実を知りたいと思ったでしょう。本当の名前を知りたいと。ヨハンはそれを確かめるために母に会いに行ったのではないでしょうか。


彼がその場にいたことを示す、痕跡を残したままのベッド。光が差し込み穏やかな風に吹かれている病室。これらは、ヨハンが救われたことを暗示しているのではないかと思っています。
もうヨハンは怪物じゃない。
「ANOTHER MONSTER」を読んだ今も、その思いは変わりません。


■ヨハンの今後


最後は妄想を含めた予想です。寛容な方だけお読みください……。


もうね、この際テンマは、ヨハンもニナもディーターもみんな引き取ってしまえばいいんですよ。三人ともテンマを父親のように慕っているわけだし(ニナは微妙?)、テンマ先生責任取りなさいよと。それで仲良くピクニックですよ。
だいたい当のテンマが孤独ですからね。いっそ家族を作っちゃいなさいよと。


テンマが国境なき医師団で留守の時は、ライヒワイン先生の所に押しかけてしまうのもいいかもしれない。ライヒワイン先生はみんなのおじいちゃんですから。この三人の他にも、休みの日はみーんな入り浸って。ってありえないですか、そうですか。


もしくはヨハン達三人とも国境なき医師団に付いてっちゃったり。あ、弁護士志望のニナは無理か…。ヨハンなんかその才能を生かしてテンマの助手だってできるはず。うん、いいかもしれない。死だけを見てきた彼が、これからは生も見ていくと。


……と妄想しつつも、ヨハンがまっとうな生活を送ろうとする時点で、法律的な問題が山積みなわけだけれども。数え切れないほどの罪を犯したけれど、それをすべて立証するのは難しいでしょうし、何より旧体制下の国家犯罪に翻弄されたヨハンを裁くことができるのかといった問題も孕んでいますからね。
また、ヨハンを利用しようとする人間もごまんといるでしょうから、国としては彼の扱いに困るような気もします。ヨハンはこれからどうするのでしょうね。


母親に教えてもらった本当の名前を名乗ることにして、新しい人生をやり直す。それが一番いいような気がします。ヨハンにとっては生を見つめることが殺めた人々への償いになるとも思いますし……ってこれは甘すぎでしょうか。でも今までのヨハンのことを思うと幸せになってほしいと願わずにはいられないのです。
そして仲良し家族計画を(ry


……かなりの長文になってしまいました。考察するうちにどんどん書きたいことが増えていってこんなことに。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。


■関連記事


MONSTER 記事の一覧リスト
このブログのMONSTER関連の記事をまとめて載せています。

[MONSTER]アニメ他 | 22:58:36 | コメント(39) | ▲TOP

とうとう最終回を迎えたMONSTER。1年半にも及ぶ長いスパンでの放送にもかかわらず、最後までその高いクオリティを落とさなかった貴重なアニメでした。
作画、演出、音楽、声優陣、すべてにおいて丁寧に作られ、とくに終盤は原作を超えることもしばしばで、原作つきのアニメでは奇跡といってもいいのかもしれません。
この作品を観ることができて幸せでした。スタッフに感謝と拍手を送りたいです。


■映像、演出


映画のように抑えた色調。原作のイメージを壊さず、原作以上に端整なキャラクターデザイン。どれも作品世界に溶け込んでいて良かったです。背景画は、ドイツやチェコの美しい街並み、幾度か出てきた夕陽のシーンが印象的でした。
また、初期の頃は原作そのままの構図が多かったような気がしますが、後半になるとアニメならではの映像も増え、洗練されていったのがよくわかりました。その最たる例が、ぐるりとカメラが回るあのマトリックス映像(!)なのかもしれません。


■音楽、OP、ED


場面場面で様々な表情を見せ、作品を盛り上げてくれた音楽。終盤はMONSTERの切ない部分を凝縮させた曲を多用して、物語に厚みを出していました。


作品の顔であるOPとEDについても。
高音のコーラスが耳に残る「GRAIN」と、物語の鍵となる人・物・シーンを存分にちりばめたOPが非常に秀逸。(終わりの風景はもちろん、三匹のカエルの看板、赤いバラの屋敷、ボナ博士まで登場。惜しむらくはグリマーさんが出てこなかったことくらい)
絵本の「なまえのないかいぶつ」の内容が少しずつ進むEDも独創的で面白いと思いました。デヴィッド・シルヴィアンの「For The Love Of Life」からフジ子・ヘミングの「Make it Home」に変わった時はショックでしたが(笑)今では「Make it Home」のやさしいメロディに癒されています。


最終回なので注意書き。以下はあらすじも含めてネタバレです。最後まで観ていない方はお気をつけください。しかもいつも以上に長文です……。

【あらすじ】
惨劇は終わり、人々はそれぞれの道を歩んでいた。
エヴァはキッチンコーディネイターの仕事に就き、ルンゲは警察大学校の教授になった。ヴァーデマンはグリマーの嫌疑を晴らし、大学を卒業したニナは弁護士を目指していた。そして事件後、事情聴取を受けたテンマは身の潔白が証明され、今は国境なき医師団に参加していた。
ヘッケルの力を借りて、双子の母親の居場所を突き止めたテンマ。テンマから双子が生きていると聞き、母親は涙を見せる。過去、自身が犯した過ちに苦しんでいた彼女は、双子の名前をテンマに明かすのだった。
テンマは病院で眠り続けるヨハンに、母から愛されていたこと、本当の名前があったことを話すが、突如ヨハンは意識を取り戻し、テンマに過去の出来事を語り始める。
それは双子の親子三人が三匹のカエルに隠れ住んでいた頃だった。双子のどちらを赤いバラの屋敷に連れて行くか、実験と称して母親に選択を迫るフランツ・ボナパルタ。母にしがみつく子供達。ついに母親はニナの手を離してしまう。
「僕を助けようとしたの? 僕と妹を間違えたの? いらなかったのはどっち……?」
テンマに母親の愛情を問うヨハン。それは夢か幻か。
テンマは病室を後にし、ヨハンは姿を消す。――ベッドに痕跡を残したままで。


■キャラクター感想


長くなってしまったので登場順にキャラクター別の感想。
冒頭は原作にはなかったカールシューバルトのシーン。いきなりこのシーンが来たから、他にも追加シーンはあるのかと期待したのですが、唯一の台詞つきアニメオリジナルのシーンでした。うーん他にも見たかった。あ、この人たちだけキャラ感想にならない…(笑)


エヴァはすっかり落ち着き、ぐんときれいになりました。
以前のケバさが抜け、いい女になったなぁと。今の彼女なら、アルコールや誰かに依存することもなくやっていけるでしょうね。どん底に落ちていた頃のエヴァを思うと感慨深いです。この作品で一番変わったのが彼女なのかもしれない。


グリマーさんの墓を訪れた、スーク、ヴァーデマン、ルンゲ警部
グリマーさんと交わしたビールをおごる約束を墓前でようやく果たすルンゲ警部が切ないですね。彼は娘さんとメールのやりとりをするようになったそうですが、グリマーさんや多くの人達との出会いで家族と向き合うことができたんでしょうね。孫にも会えるといいね。ホロリ。
グリマーさんも……生きていたら、この三人とも友人になれていただろう彼のことを思うと本当に悲しい。グリマーさんには生きていてほしかった……。


声がちょっと低くなり背も伸びたディーターと、久しぶりに登場し、“ますますずる賢そうになった”ヘッケルのコンビ。
ディーターって見事にテンマとヘッケルに対する態度が違うなぁ(笑) しゃべりながら器用にリフティングをする生意気っぷりが良かったです。
ディーターが最終話に出てくるのは当然として(後半は存在が薄いですが一応主要キャラですから!)、ヘッケルまで登場するのは嬉しい。怪物だとか葛藤だとか、そんなものとは一番遠い所にいるヘッケルはかなり好きなキャラです。安原義人さんの声もやっぱりいい。


ヘッケルが登場したのは、双子の母親の居場所を捜すという重要な役目のため。テンマも人の使い方が上手いなあ。警察に盗みに入るなんてほとんど自殺行為ですが、それを難なくこなしてしまうのがヘッケルのすごいところです。母親の居所が警察のマル秘資料に載っていたのは気になるところではありますが。


長く大学を休んでいたのに、卒業論文がトップだったニナ
ヨハンと同じように彼女も生まれながらに天才なんでしょうね。ヨハンがその能力を負の方面にしか向けられなかったのに対し、正しいことにその頭脳を使うことができるニナは幸せなのかもしれません。検事から弁護士に志望を変えたということは、ヨハンやテンマと関わったことで考え方が変わったのでしょうね。
しかしここのシーン、ドアだけCGで違和感があったです。


以前、テンマとニナの関係に恋愛感情はないだろうと書いたけれど、テンマに会えることを無邪気に喜ぶニナを見ると、テンマにほのかな恋心を抱いていてもおかしくないような気がしました。親子ほども歳の離れている二人ですが、ニナにとっての父親はあくまでフォルトナーさん。“白馬の王子様”の幻想を抱いていた彼女が、心を救ってくれたテンマに恋愛感情を持っても何ら不思議はないのですね。
ただ、テンマがニナに対して恋愛感情を抱くのは難しいかもしれませんが。


髪を切り、髭を剃ったとたんに若返ったテンマ
原作時、長髪テンマが好きだったので髪が短くなった彼は悲しかったけれど、アニメだと妙に爽やかでかわいくて、これはこれでありかなと思うように(笑) いや、でもやっぱりあそこまで短くしなくてもいいかな。短くても外科部長時代くらい(後ろがもうちょっと長い)がちょうどいいような気が。一番好きなのはミュンヘン編辺りの長さですが。
大学教授を辞退して国境なき医師団に参加というのはテンマらしい選択です。ヨハン追跡の旅で失ったものも多いだろうけれど、決して苦しみだけを生んだわけではないのですよね。あの長い旅があってこそ選ぶことができた道なのでしょう。


容貌がずいぶん変わってしまった双子の母・アンナ
歳だって40代のはずなのに、かなり老けて見えます。ボナパルタへの憎悪、子供達に対する後悔、実験による障害……双子を手離してからの苦悩の日々が美しかった彼女を変えてしまったのでしょうか。
同じく年老いた姿で登場したボナパルタ(ポッペさん)とも重なります。彼女もボナ博士と同じように報いを受けた一人なのかもしれません。どういった経緯で彼女が修道院に身を寄せるようになったのか気にかかります。


一時はこの双子の母親こそが「本当の怪物」だと思っていましたが、双子のことを聞いて涙を流す姿を見るとそうとは言い切れないような気がします。確かにあの選択時は怪物のように狂気じみていましたが、この人も被害者には違いないわけで。
「手をはなさないで」という子供達の言葉を口にしながら、片方の子を差し出してしまった右手を動かし、「本当の怪物は誰……?」と呟いた母親。あの時の記憶を忘れられずに、ずっと長い間自分を責め続けていた証しでしょう。
彼女は確かに過ちを犯しました。けれど双子を愛していたのも確かだと思うのです。なぜならあの実験の日々の中、双子の名前をちゃんと考えていた人だから……。


選択のシーン、「こっち……いえ……こっち」は絶叫調ではなく、原作のように淡々と言ってほしかったのですが、選ぶ時の母親の顔をあえて映さず、選択される側の双子の様子を重点に置いていたところは良かったと思います。
手を離されそうになって必死にしがみつくヨハンや、差し出される時のニナの細かい描写は、原作より双子がいじらしくて胸を打ちました。いくら卓越した能力を持って生まれたといっても、この時は母にすがるしかできない小さな子供だったんですよね。ああ……。


最後の最後でヒールっぷりを披露してくれたボナパルタ
本当に血も涙もない人だったんだね、ボナ博士。と言いつつ冷酷無慈悲な彼に萌えてしまったのは秘密です。紫の瞳がたまりませんな。


双子の母親に選択を迫るシーン。彼は、双子の母親の復讐心を利用したのでしょうね。 子供達を必死に守る彼女に一言「これは実験だ」と言えば、彼女が子供を差し出すのをわかっていたと。「実験」という言葉を畳みかけるように言う彼と、母親のはっとした表情を見てそう感じました。
(なので私は母親がヨハンを助けようとしたのではなく、ニナを怪物にするために差し出したのだと思っています)


ちなみにボナ博士が彼女への恋心を自覚したのは、この直後だったのではないかと想像しています。
“悪魔に魂を売った”後の母親はどんな顔をしてどんなことを思ったのでしょうね。私は、その時の痛ましい彼女を見て惚れてしまったのではないかと思うのですがどうでしょうか。うーん、だとしたらなんて皮肉。


最後はどこへ行ってしまったのか、解釈が分かれるヨハン
…が、長くなるので彼の感想はその2で語ります。スミマセン。
母親の選択やラストシーンの考察、ヨハンのその後予想、本当の怪物は何なのかといったことについても書いていきたいと思っています。

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MONSTER 最終話「本当の怪物」 その2

[MONSTER]アニメ他 | 20:55:32 | コメント(2) | ▲TOP

人の命は平等だと考えるテンマに、死こそが平等なのだと突きつけるヨハン。銃弾に倒れたヨハンをもう一度救うことで、テンマは自分の信じたものを貫き通します。

【あらすじ】
「人間はね……何にだってなれるんだよ」――ニナを苦しませたボナパルタのこの言葉は呪いの言葉などではなく、ニナを怪物にさせないためのやさしい呪文だった。
テンマとボナパルタ、ヴィムの三人の前についに現れたヨハン。ボナパルタはヨハンに心中を迫るが、生きていたロベルトに撃ち殺されてしまう。そのロベルトもルンゲとの死闘で深手を負い、息絶える。
対峙するテンマとヨハン。「あなたにとって命は平等だった……でももう気づいたでしょ? 誰にも平等なのは……死だけだ」
ヨハンは額に指差し、テンマに終わりの風景を見せる。
二人のもとに辿り着いたニナはヨハンに許すと告げ、テンマに撃つのをやめるように言うが、ヨハンはヴィムに銃口を向ける。「Dr.テンマは僕を撃つんだ……そうでしょ?」
そしてヨハンは頭を撃たれた。だが撃ったのはテンマではなくヴィムの父親だった。
ヨハンの命を助けることができるのはテンマだけだった。「あなたは間違っていない」とテンマに言葉をかけるニナ。すべての葛藤を振り払い、テンマはヨハンを救う決意をする。

「人間はね……何にだってなれるんだよ。君達は美しい宝石だ……。だから怪物になんかなっちゃいけない……」
これまで幾度となく出てきたニナの記憶では、ボナパルタは暗い口調と覆い被さるような手の動きだったから双子を怪物にする恐ろしいシーンだと思っていたのに、それがミスリードだったとわかるのがこのシーンです。
ボナパルタのやさしい言葉、ニナの頬を包む大きな手……MONSTERで好きなシーンのひとつです。バラの屋敷の惨劇を目撃し恐怖に震えていたニナが、ボナパルタに怪物になんかなっちゃいけないと言葉をかけられて震えを止める細かい描写もよかったです。


それにしても「何にだってなれるんだよ」という言葉だけでなく、ボナ博士の真意もヨハンに伝えることができたら結果は変わったかもしれないのにと思うと悲しいですね。
ニナが怪物にならずに済んだのは、ヨハンがニナの中の怪物を全部背負ったというのもありますが、ボナ博士のこの言葉もとても大きかったはずです。
こうして考えると、ヨハンばかりが貧乏くじを引いたようで、もう不憫としか言えませんね……。


ヨハンに「私と一緒に死のう……」と詰め寄ったボナ博士。
彼は彼なりのやり方で責任を取ろうとしたのでしょう。でもそれはただ終わりにするだけ。
(最終話ネタバレ→)ヨハンを殺さずに命を助け、母から愛されていたことを伝えたテンマだからこそ、ヨハンを「怪物」から解放することができたのです。そう、ベッドからいなくなったヨハンはもう怪物ではないと信じています。(←ここまでネタバレ)
ボナ博士は報いを受けました。それも自身がつくりだした511キンダーハイム出身者の手によって。けれどそれさえもずっと覚悟していたのだろうと思うとただ悲しいのです。


満身創痍の中、執念でヨハンの所まで体を引きずりボナパルタを撃ち殺したロベルト。
終わりの風景を渇望しつつも見ることも叶わないまま息絶えましたが、雨粒を涙のように見せる演出が巧いと思いました。
しかしなぜロベルトには終わりの風景を見ることができなかったのでしょうか。


まず考えられるのは、望んで見られるものではないということ。というよりもそう望んだ時点でアウトのような気もします。
ふたつめは、ヨハンが終わりの風景を見せるというのは「唯一の愛情表現」(ニナの台詞より)でもあるからです。名前を与えてくれたヴォルフ将軍や、命を救ってくれたテンマ……ヨハンにとってはそんな特別な人達に自分自身の孤独と絶望を共有してほしいという思いが、終わりの風景を見せるという行為につながっているのでしょう。


……要するに、ヨハンはロベルトに愛着なんか全っ然湧いていないということなんですが(^^; ヨハンは駒の一つとしか思ってなさそう。哀れロベルト……。


ロベルトには見せなかった終わりの風景をテンマに見せるヨハン。
原作を読んだ直後のMONSTER全巻ネタバレ感想では、テンマが終わりの風景を見ていないかのように書きましたが、今ではやはりテンマは終わりの風景を見たのだと思っています。


そもそもテンマの見た終わりの風景とは何なのでしょうか。
それを考えるうえで外せないのがヨハンとの関係です。
1986年、テンマはハイネマン院長の命令を無視してヨハンを執刀しました。それまで院長の命令に逆らえず、ただ言われるがままだった彼が、初めて自分の意志で行動したのがヨハンの手術でした。
テンマにとって「人の命は平等」という思いを象徴する存在がヨハンなのです。


そのヨハンを撃つという行為は、テンマからすれば自身の信念を打ち砕くということに他なりません。ロベルトには躊躇せずに撃てたのに、ヨハンに対してどうしても撃てないのは、テンマのアイデンティティが崩壊することになるからです。それはテンマにとって名前を失うのと等しいこと。だからテンマには終わりの風景が見えるのでしょう。
怪物を生き返らせてしまったことに自責の念を抱きながらも、その一方で、ヨハンを殺害することが自己の信条と矛盾してしまうことにテンマはずっと葛藤していたのです。


それでもヨハンに銃口を向けるテンマに「あなたには見える……終わりの風景が……」と言うヨハン。風が吹きすさぶ荒野の風景をテンマに見せます。
ヨハンはすべてをわかっていたのだと思います。テンマの葛藤も苦悩も孤独もすべて。そしてヨハンも自分が抱いているそれらのものをテンマに理解してほしかったのでしょう。
二人が互いの心情を共有したのが、あの終わりの風景のシーンだったのだと私は解釈しています。


ニナに許すと告げられても、テンマに撃たれて死ぬことだけが唯一の望みかのように、ヴィムに銃を向けるヨハン。子供を盾にすればテンマでも撃たざるを得ないだろうと思ったのでしょう。けれどもこの行動の裏で、ヨハンはやはりテンマに撃ってほしくなかったのだと思います。第57話「あの日の夜」でアンナに「僕を撃てよ」と言った時と同じように。


「平等なのは死だけだ」とヨハンは言いました。けれども、それをテンマに実行させようとしつつも、自分の考えは間違っていると打ち破ってほしかったのだと思います。「人の命は平等」というテンマの信条の中に、自分自身も入れてほしかったのです。
あの時、ヨハンはテンマにすがっていました。いつも表情の変わらない彼が「そうでしょ?」とテンマに言った時、表情にならない表情が彼にはありました。笑顔を作ることも涙を流すことも演技ならできる彼も、あの時だけはそんな余裕さえなかったということです。
ヨハンはテンマに撃ってほしくなかった。あの表情を見るとそんな逆説もあり得るのではないかと思うのです。


結局ヨハンはテンマにではなく、ヴィムの父親によって撃たれます。ヨハンを救うことができるのはテンマしかいない。再びテンマに突きつけられる重い選択。
ここでニナはテンマにも許すと言います。
「私は許したい……。テンマ……あなたは間違っていない……。あの時も……これからすることも……」


ニナというキャラクターは、ヨハンとテンマ、二人を「許す」存在なんですね。
対してヨハンは、「死」をテンマとニナに突きつける存在。
そしてテンマはそんな二人を「救う」存在に位置付けられていると。
そうしてニナに許されたテンマは、自分の信じたものに立ち返り、ヨハンを救うのです。長い長い旅の末に出したテンマの答えに、静かな感動を覚えたシーンでした。


クライマックスということもあり、今回は緊迫感のあるシーンが続きましたが、ちょっと一息つく温かいシーンが、なくなった宝くじのことよりも夫婦の絆を再確認する夫婦のシーン。重いストーリーの中でも、こんな些細なエピソードを入れるところがMONSTERの良いところですね。


作画の面では、今回ヨハンもニナもその美しさが際立っていました。とくにヨハンはその眼差しひとつひとつが印象的で、見とれてしまいました。このブログ、ヨハンが原作より劣る作画だと何回かいちゃもんつけていたよーな気がしますが、今回の出来は満足です。雨がしたたって美しかー。


次回はついに最終回。私自身はもう放送は見ているので、毎週の楽しみがなくなって寂しいです。ともあれ、次回の感想も頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m

[MONSTER]アニメ他 | 23:18:00 | コメント(4) | ▲TOP

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