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備忘録を兼ねた時系列考察その3です。今回はミュンヘン編、ヨハンがシューバルトに近づく辺りからミュンヘン大学図書館火災事件まで。
ものすごく遅くなったけど、UPできてよかった…。コメント下さった方、ありがとうございます。



当然ネタバレなのでご注意ください。年月など『ANOTHER MONSTER』を参考にしている箇所もあります。年齢は多少前後しているところも。基本的には、人名や巻数などは完全版ではなく旧版単行本に沿っています。わかりにくいエピソードのみ、巻数の注釈あり。内容が複雑なため、後で訂正、追記をこっそりすることがあります。


腐向けではないですが、キャラ好きが高じた結果、想像・推測を越えて妄想になっている部分もあります。苦手な方はご注意ください。


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◆1996年 木曜日の青年(ドイツ・ミュンヘン/双子21歳)

ミュンヘン大学・フリードリッヒエマヌエル校の学生に成りすまし、大富豪ハンス‐ゲオルグ・シューバルトに近づくヨハン。
目の見えないシューバルトにラテン語の本を読んで聴かせるアルバイトの金曜日を担当し、木曜日担当のエドムント・ファーレンをシューバルトの息子だと騙らせる。
しかし実の息子であり火曜日担当のカール・ノイマンが現れると、用済みとなったファーレンを自殺に見せかけて殺害。今度はカールに接近していく。(6巻)

バイトの募集が男子学生のみなのは、マルゴット・ランガーの死(1995年11月)を知ったシューバルトが、まだ生きているであろう息子を捜すため? シューバルトはカールにも家族のことを訊ねていた。
エドムント・ファーレンが息子だと信じたのも、ファーレンの話す内容があまりに詳細だったから。もちろんファーレンは、事前にヨハンからマルゴットについて詳しく聞かされていたと思う。1992年にヨハンがマルゴットと同居していたのもこの計画の内。


ちなみに、ヨハンが法学部、カールが経済学部経営学科、ファーレンが文学部哲学科、ロッテが文化人類学科。
ヨハンが法学部を選んだのは(実際は在籍していないけど)ニナもハイデルベルク大学の法学部在籍だったからだろうか。
カールは当初息子だと名乗る気はないと言っているものの、実業家である父親を相当意識していたことがわかる。


・ヨハンの目的


最初はファーレンに息子を騙らせ、次にカールに接触したのも、シューバルトに取り入るための行動。
5巻、ロベルトがニナに「彼は今、莫大な金を手に入れようとしている…」と語るけれど、この時に闇の銀行のトップを離れたということだろうか。
巨額の資金を得て、次のステップとしてシューバルトの政界・経済界への影響力を欲したのだと思う。


・ファーレンの遺書「これ以上、欺くことはできない」


死んだファーレンの部屋に残されたメモ。実は遺書ではなく、『ガリア戦記』の一節を書き出したものであることが私立探偵リヒャルト・ブラウンの調査で判明する。
ヨハンがラテン語の意味を訊ねるなどして、事前にファーレンに書かせたということだろう。筆跡鑑定もされ、それがそのまま遺書となった。


・ヨハンの人心掌握術


カール→里親の許を転々とし、家族の温かさを求めていたカールには共感の涙を見せ、早々と籠絡する。
シューバルト→目の見えないシューバルトには、森の跡形もない工業用地を前にして美しい風景を情感豊かに語り、容易く懐に入る。リンゴまで持ってきていたことに周到さが窺える。
ファーレン→文学部哲学科所属のファーレンには、自信が溢れた振る舞いと機知に富んだ会話ですっかり丸めこんだと予想。


・ヨハンの涙


本当の涙とする意見もあるけれど、カールの信頼を得る目的があったことから演技だったと思う。彼が真実の涙を流したのは少なくとも二回、アイスラー記念病院で手術後アンナと再会した時と、大学図書館で絵本『なまえのないかいぶつ』を目にした時。
しかしカールと親しくなるためとはいえ、また高い場所にいるヨハン。


・施設のボランティア


読書のバイトとは別に、児童施設のボランティア活動をするヨハン。一体何のため? 2年前の1994年、連続殺人犯のユルゲンスが公園で子供をたくさん連れているヨハンを目撃しているので、その頃から既にボランティアをしている模様。
善人を演じる上で子供を利用しているとも取れるけれど、子供という存在に純粋に興味を持っていそうな節もある。


◆1996年 リヒャルト(ドイツ・ミュンヘン/双子21歳)

シューバルトは死んだファーレンが実の息子なのかどうか、元刑事で探偵のリヒャルト・ブラウンに依頼する。アルコール依存症で刑事時代に問題を起こした過去を持つリヒャルトは、Dr.ライヒワインのカウンセリングを受けながら、ファーレンの死が自殺ではないことを嗅ぎ当てる。

旧単行本とANOTHERの表記はリヒァルトだけど、アニメや完全版はリヒャルト。彼に関しては、この考察では後者の表記で。


◆1996年or1997年 証拠の品(ドイツ・ミュンヘン/双子21歳)

カールにラテン語を教える傍ら、シューバルトの息子だと名乗り出るよう説得するヨハン。一度は拒否されるが、証拠品であるウサギの足を手に入れる。親子の仲を取り持ち、シューバルトの秘書に納まる。(7巻)

カールとシューバルトの和解。一見いい話ではあるんだけど、里親のリントナー夫妻がちょっと不憫。養子になると信じて泣いて喜んだのに、とんだぬか喜びという。いやでもシューバルト財閥とのコネができたと思えば。


◆1997年3月1日 ライヒワインの手紙(ドイツ・ミュンヘン/双子21歳)

刑事時代のリヒャルトが抱えていたいくつもの未解決事件。それらが一連の事件だったとリヒャルトから聞いたライヒワインは、元教え子の心理学者ルーディ・ギーレンに手紙を出す。
以前ギーレンから連続殺人犯のユルゲンスとその「友人」について聞いていたライヒワインは、リヒャルトの未解決事件と関係すると睨み、手紙でテンマのことを訊ねたのだった。
二人はそれらの事件と中年夫婦殺人事件を繋ぐキーワードが「ヨハン」であると知り、シューバルトの秘書である金髪の青年に目を向けていく。

手紙の冒頭に「München 1.3.97」と書かれていることから、1997年3月1日。
リヒャルトの言う未解決事件とは、1992年から1994年にかけて起きた「神の声殺人事件」「ドルナッハ社社長殺人事件」「会計士ホルマー殺人事件」、そして「中年夫婦殺人事件」。


話は変わるけど、大学時代のアルバム写真のテンマがめちゃくちゃ可愛い。そりゃエヴァも高校生みたいだったと言いますわ。


◆1997年 ヨハンとユルゲンス(ドイツ・ミュンヘン/双子21歳)

リヒャルトはヨハンの周辺を嗅ぎ回り、ブルンタールで生まれたヨハン・リーベルトとは別人だと突き止める。
一方、ギーレンはユルゲンスと面会。リヒャルトが撮ったヨハンの写真を見せると、ユルゲンスはヨハンの髪を黒く塗り潰した後、「君もおいでよ」と言葉を繰り返し、ボールペンで自殺する。

3年前の1994年、ハンナ・ケンプ夫人を殺害した翌日、公園を訪れたユルゲンスは子供をたくさん連れたヨハンを目にしていた。ヨハンの写真や姿が自殺のトリガーとなるような洗脳をされていた?


◆1997年 処刑(ドイツ・ミュンヘン)

リヒャルトが娘に会う約束をした日の前夜、ヨハンが家を訪れる。二人はバーで会話した後、ミュンヘン大学の屋上に移動。目的を問うリヒャルトに、ヨハンは17歳の少年シュテファン・ヨースを処刑した罪を逆に追及する。言葉を失うリヒャルトに渡されるウィスキーの瓶。リヒャルトは泥酔した後、転落死する。

・シュテファン・ヨースの謎


511キンダーハイム出身というシュテファン・ヨース。ヨハンが壊滅させる前に511を出たとなると、ヨハンより上の年代? 17歳という年齢を考えるとヨース射殺はかなり前の出来事になる。
それとも、511に不適合等の理由で途中で放り出された例もあるんだろうか。それならヨハンより年下でもおかしくない。
リヒャルトは少なくとも1994年の事件までは担当していたようなので、いつ射殺事件を起こして刑事をやめたかで、ヨース関連の時系列も変わってくる。


・リヒャルトについて


リヒャルトは調査も優秀な上、駅のホームから突き落とされそうになったり、工事現場で頭上に鉄板を落とされたり、車に轢かれそうになってもすべて回避するほどの勘の良さと身体能力を持ち合わせていたため、ヨハンが直々にお出迎え。
リヒャルトに渡すウィスキーがスコッチではなくラッケだったのは、ヨハンもミスを犯すということ。他人の酒に対するこだわりにはあまり興味がなさそう。


ヨハンの指摘通り、リヒャルトは勤務中に酒に酔ってヨースを撃ち殺したのではなく、素面のまま射殺し、その後バーで酒に逃げて罪の意識から逃れようとしたというのが真相なのだろう。
Dr.ライヒワインにも言えなかった心の奥底の罪悪感をヨハンは言葉巧みに突いて転落死に追い込んだ。おそらく一切手を触れずに殺すことに成功したヨハンの恐ろしさがよくわかるシーンでもある。


ただ相手が未成年とはいえ、娘がいるリヒャルトの、連続強姦殺人犯を許せないという感情は至極当然だとも思う。
また犯人に対する射殺は、たとえそれが未成年であっても欧州では実際によくあること。しかもヨースは銃まで所持して銃口を向けてきたのだから、リヒャルトの処遇は少し厳しい気もする。


単独行動をした上、アルコールに逃げたことは批判されて仕方ないことだけれど、有能なリヒャルトを疎んじていた人間も中にはいたのでは?
事件をきっかけにこれ幸いと都合よく退職させられた気がしないでもない。酒絡みで普段から同僚たちに迷惑をかけていた可能性もあるが。(でもドイツ人は昼間でもビールを飲むらしいし、飲酒に関しては寛容なイメージがある)


ライヒワイン先生にリヒャルトの死を何の感情もなく告げた刑事は、元上司のリヒャルトに「のろまのマルティン」と呼ばれていた人物。警察関係者が一人も葬儀に出ないというのは相当な確執があったということ。


ANOTHERでもライヒワイン先生の項目で少しこの件が書かれている。ヨース射殺を間近で目撃したというリヒャルト告発の匿名文。ヨハンというよりも、この「のろまのマルティン」が怪しいと思う……。


しかしリヒャルトが「未解決の事件の数だけ酒量も増えていった」ということはつまり、死因どころかアル中になったのもだいたいヨハンのせいということに……。合掌。
リヒャルトの元奥さんと娘のローゼマリーも、その後ライヒワイン先生のカウンセリングを受けたと信じたい。


◆1997年5月1日~22日 ギーレンのメッセージ(ドイツ・ミュンヘン/双子22歳)

「カンニングの思い出を語り合おう。――ルーディ」
テンマと連絡を取るため、ギーレンがドイツ全州の有力新聞に三行広告を掲載。
当のテンマはメッセージを見ていたものの、ギーレンを巻き添えにしないために連絡せず。

テンマのキャラ語りでも書いたけれど、テンマもカンニングはしていたと思う。
ギーレンの答案用紙を見ようとしたところ、ちょうどカンニングを目撃したということなのかなと。ギーレンをじーっと長く見ていたのもそのため。
今では聖人の域にいるテンマも、大学時代はまだ完璧ではなかったはず。知識や技術は天才的でも、院長の命令よりもヨハンの手術を優先した時からようやく医師としての姿勢が確立されたと思ってる。


◆1997年 ライヒワインとロベルト(ドイツ・ミュンヘン/双子22歳)

リヒャルトの遺志を受け継ぎ、事件の調査を開始したライヒワイン。身の危険を感じながらも、バーでウィスキーを購入した人物がリヒャルトではないことを突きとめる。
そんな彼の許に、ある夫婦がカウンセリングに訪れる。ヘッセと名乗るこの夫こそ、ヨハンの部下、ロベルトだった。ライヒワインを始末するため銃を向けるロベルト。そこへテンマが現れ、ライヒワインはかろうじて助かるのだった。

・ヘッセ夫妻


Dr.ライヒワイン急襲部隊ことヘッセ夫妻。
ヨハンの信者兼部下としては貴重な女性の妻ヘッセ(仮)が非常に気になる。心理カウンセラーで精神医学者でもあるライヒワイン先生を騙せるほどの平凡おばちゃん演技が地味に凄い。ヨハンの部下にはどういう経緯でなったんだろう。この人も案外殺しのプロだったりするんだろうか。
蔵書寄贈セレモニーでガソリンに火を付ける役だったけれど、その後無事だったかは不明。


・ロベルトの告白


「(殺した夢を)最近は見なくなりました。孤独だったんですよ」
「彼に会ってからね……。美しい青年なんですよ。金髪のね……」
「何人殺しても、国がなくなっても、私の中ではすべてが夢みたいだったんです。でも……彼と会ってから違ったんです。すべてがリアルに見えて……もう孤独じゃなくなったんです」


これらはロベルトの本心だろう。皮肉なことに、孤独じゃなくなったからこそ「(終わりの風景は)君には見えないよ」とヨハンに告げられることになる。


・テンマが再登場


髪を前より伸ばしてテンマが久々に登場。最後に出た話が『男達の食卓』で1996年夏辺りなので、作中ではほぼ1年ぶりくらい。フュッセンの山荘で治療したハイトマイアーからヨハンらしき人物がミュンヘンにいると聞いてから、ずっとミュンヘン市内でヨハンを捜していたんだろうか。


・ヨハンに命を狙われる人物と狙われない人物


リヒャルトと同じく何度か命を狙われる場面があるライヒワイン先生。なのにテンマと接触して以降は何事もなく、自宅でも職場の心理療法センターでも普通に生活を送っている。
ロベルトはテンマに邪魔された後も狙おうと思えばいつでも狙えたにもかかわらず、なぜかその後ライヒワイン先生を殺しに現れた様子はない。


その他の人物でもそう。考察その2でも触れたけれど、ヨハンを見たエヴァも、ヨハンの存在に勘付いたギーレンも、とっくに殺されてもおかしくないのに、身の危険を感じるシーンは描かれていない。エヴァは脚を撃たれたものの致命傷という程ではなかった。


まるで、ヨハンはテンマと親交を持つ人間は敢えて殺さずに生かしているようにも見える。少なくともこの時点では。


ヨハンが殺さない理由として、ヴォルフ将軍やシューバルトの存在が大きいと思う。
元々高齢な上、周囲の親しい人間が次々と死んで、以前の面影もなく衰えた姿を見せるようになったこの二人。彼らと比べればテンマもまだ若いとはいえ、二人のように活力がなくなりヨハン追跡の旅をやめることを、ヨハンは一番に危惧したのでは?
何しろヨハンにとって、「テンマがずっとヨハンをおぼえていること……追いかけてくれることが大切だった」のだから。(ANOTHER/ギーレンのインタビュー)


◆1997年 シューバルトの右腕(ドイツ・ミュンヘン/双子22歳)

ヨハンがシューバルトの秘書になってから、シューバルト財閥のグループ企業すべての業績が好転する。

ヨハンが関わりだしてから関連企業の業績が軒並みアップとかさすがヨハンとしか言い様がない。
「今や、あの秘書のご機嫌とるのがシューバルト氏と商談まとめる一番の手立てですからね」と日本人商社マンに言われるほど、経済界からも一目置かれるまでに。株価も相当上がってそう。そしてヨハンがやめて大暴落になるとw


レセプションパーティーにも出席し、テレビに堂々と映るヨハン。謎のイケメン秘書として経済界だけでなく一部のドイツ人にも覚えられてそうだ。今ならネットで拡散間違いなし?


もしこの後、絵本の件がなければ、このままシューバルト財閥を乗っ取って、ゆくゆくはドイツやヨーロッパ全体に影響を与える存在になっていたはず。その過程でジーヴァーニッヒ財閥の御曹司にして511の生き残り、政治家志望のクリストフ・ジーヴァーニッヒを利用して暗躍する予定だったのかもしれない。


◆1997年 ニナとロッテ(ドイツ・ミュンヘン/双子22歳)

この4年間にバイエルン州で起きた未解決事件がヨハン関連と睨んだニナはミュンヘン大学図書館を訪れ、マルゴット・ランガーの件からロッテ・フランクと知り合う。興味を持ったロッテはニナをダンスパーティーに誘い、別れ際にニナとヨハンがそっくりなことに気づく。(8巻)

・ニナが再登場


ニナの登場も5巻『幸せな休日』以来なので、作品中でも1年ぶりくらい。ヨハンがミュンヘンで幸せに暮らしているとロベルトから聞いて、ミュンヘンに滞在しながら色々調べていたんだろうか。
ところでロッソさんには「アンナ・リーベルト」を名乗っていたのに、ロッテには本名の「ニナ・フォルトナー」を名乗ったのは、元殺し屋とただの大学生の違いから?


・非難轟々のカールの行動


父親と仕事のことで頭がいっぱいでロッテの恋心にまるで気づかないカール。ダンスパーティーの件は見当違いの親切心からなんだろうけど……ほんとダメダメだね、チミ。
その後もカールと変わらず友情を続けるロッテは人間ができてると思うw


◆1997年 聖域(ドイツ・ミュンヘン/双子22歳)

シューバルトやカールと共に森でバードウォッチングをし、公園では子供の面倒を見るヨハン。その近くでは、テンマがライフルのスコープで狙撃の機会を窺っていた。

狙撃銃はドイツ製のモーゼルSR93。
前金は1万マルクで、Wikipediaによれば当時の為替レートで65万円から70万円ほど。
大金でもぽんと払えるなんて逃亡の身なのにテンマお金持ち。きっと1年出ない間にこつこつ闇医者で稼いでいたに違いない。


スコープのレンズの反射からかテンマの存在に勘付いているヨハン。わざと視線を送ってテンマを動揺させる辺り、結構楽しんでそう。
公園では子供がいるため、森では鳥を愛する老人がいたため、その場所では狙撃を諦めたテンマのことは、ヨハンは予測済み?


◆1997年 子どもの情景(ドイツ・ミュンヘン/双子22歳)

子供の転落死が相次いで発生。その背景には、子供に危険な遊びを教えるヨハンの存在があった。
カウンセリングのためライヒワインと共に病院を訪れたディーターは、転落死を免れた少年と出会う。ビルの屋上に連れて行かれ、「ヨハンはもうすぐ日本人に撃ち殺されるって言ってた」という少年の言葉を聞く。

屋上でのディーターの台詞が泣ける。テンマの「明日はいい日だ」をずっと胸に大切にしていたんだなぁ。
そして、やっぱり高い場所にいるヨハン。


◆1997年 なまえのないかいぶつ(ドイツ・ミュンヘン/双子22歳)

大学図書館の下見でチェコ語の絵本『なまえのないかいぶつ』を手に取ったヨハンに異変が起きる。体を震わせ、涙を流しながら叫び声を上げ、ついには卒倒する。

・ヨハンにとってのターニングポイント


511を経て過去の記憶のほとんどを失い、まさに名前のない怪物として生きていたヨハン。なかったはずの感情を爆発させ、チェコでの子供時代の記憶をすべてではないにせよ蘇らせたのがこの瞬間。と同時に「自分の中の怪物」に初めて疑問を抱いた瞬間でもある。
今まで書いてきた「僕を見て」のメッセージがこの絵本からだったと知り、どんな心境だったんだろうか。


なおシューバルトの秘書として、チェコの商談に行っていた日本人商社マンの山本に、『なまえのないかいぶつ』を見つけてほしいと頼んでいた模様。テンマ以外にヨハンと関わった貴重な日本人だったりするw


◆1997年 闇の果て(ドイツ・ミュンヘン/双子22歳)

退院したヨハンは、マルゴット・ランガーを騙っていた元娼婦の“赤いヒンデンブルグ”に会う。ファーレンやリヒャルトの件から脅迫されるが、隣の部屋に控えていたロベルトに射殺させ、その場を去っていく。

「一番の恐怖って、なんだと思う?」
「一番暗いところに、たどり着いたと思ってた……」
「でもね…… その先に…… もっと暗い闇が見えたんだ」
「もうやめたんだ…… もうシューバルトに興味はなくなった」


絵本を読んだことをきっかけに、もっと暗い闇が見えたというヨハン。はっきりと思い出せない暗い闇、一番の恐怖。
それはヨハンだけが持つ記憶であり、物語のラストで明かされた母親の選択のこと。シューバルトの計画を白紙にし、これ以降、過去の記憶を探し始めていく。


◆1997年9月4日木曜日 蔵書寄贈セレモニー(ドイツ・ミュンヘン/双子22歳)

シューバルトからミュンヘン大学図書館に蔵書が寄贈され、盛大にセレモニーが行われる。前日から図書館に侵入していたテンマはヨハンの狙撃を試みるが、ロベルトに阻止され、狙撃銃も奪われることに。
一方、ヨハンは部下を使って図書館に火を放ち、辺り一面が火の海になる。何者なのか問うシューバルトに、ヨハンはチェコの記憶を語る。
ロベルトの拳銃を奪ったテンマは銃口を向けられた瞬間、冷静に二発撃つ。銃でドアをこじ開け、避難路を確保すると、真っ先にヨハンの許へ。自ら額に指差すヨハンに銃を構えるが、そこへニナが現れる。
ヨハンは火の中に消え、ニナが緞帳の下敷きに。救助するテンマに対し、シューバルトは伝言役のカールを介して「双子の母親はプラハで生きている」と伝える。(9巻)

『am 04.09.(Do.)ab 18 30 gehalten』
8巻、大学図書館の掲示板に貼り出された紙に「9月4日(木)18:30から開催」とドイツ語で小さく日付が書かれている。ドイツは緯度が高いので、この時期の18:30はまだ空が明るい。
でもだとすると、テンマは丸一日図書館に篭りきりだったということに。そりゃ目に隈もできるし手の震えが出るのも無理もないかも?


・木曜日の青年


ミュンヘン編の初め、木曜日の青年はもちろんヨハンだろうと読者に推測させるような描写を散々しておきながら、結局は別人だったことで肩透かしを食った人も多いのでは?
かくいう私もその一人だけれど、このミュンヘン編最大の山場、大学図書館火災がちょうど木曜日だったことが明らかに。
木曜日の青年はやはりヨハンを指している…!
なんというひっそり伏線回収。


・蚊帳の外のロベルト


ガソリンを撒いて爆発炎上させることをヨハンから知らされていなかったロベルト。「気が変わったんだね、ヨハン!」と無邪気に喜ぶその姿は不気味の一言。
実際のところヨハンが教えてあげなかったのは、以前テンマとニナを独断で殺そうとしたことに対する嫌がらせのような気がしてならないw
しかし体に二発受けてもこの場から助かったのは凄い。ヨハンのために一生懸命左手に慣れる訓練もしたんだろうなぁと思うと健気に思えてくるから不思議。


・ロベルトを撃ててヨハンを撃てない理由


傭兵ヒューゴー・ベルンハルトの教え通り、ロベルトには引き金を二回引いたテンマ。結局ロベルトは生きていたけれど、テンマ自身は殺すつもりで撃ったのは間違いない。
殺人そのものに躊躇があるにしろ、ヨハンの場合のみ、一対一で対峙しても撃つことができないのはなぜか。


理由は二点。ひとつは自分の手で助けた子供だから。もうひとつは、医師の本分を思い出させてくれた存在だから。


1巻、患者のユンケルスに語ったテンマの言葉。
「僕も以前はそうだった……。出世して自分のやりたい研究をする……手術を成功させるのは、地位をかためる手段だ……ってね」
「でもある男の子の手術がきっかけで、僕は変わったんだ。双子の兄妹のお兄ちゃんでね、ヨハンという名前だった。頭部を銃撃されたその子を助けることで、僕は医者の本分に立ち返ることができたんだ。人の命の重さはみんないっしょだ。医者は、その命を助けるのが仕事だ……ってね」


同じく1巻、「処刑の夜」でヨハンに投げかけた言葉。
「私は君の命を助けることで、医者の本分に立ち返ることができたんだぞ!! 君を助けることで人の命の重さはすべて平等だって気づいたんだぞ!! 誰も人の命を奪う資格なんかない!! 私は何年間もそれを心に刻んで、医者として生きてきたんだぞ!!」


根底にこの思いがあるから、テンマはどうしてもヨハンを殺すことができない。
ヨハンを殺さなければならない焦燥感と、ヨハンだけは殺したくないという苦悩。それはつまり、医師として平等でありたいと願う一方で、大きな矛盾も孕んでいる。


・違和感を持ち始めたルンゲ


「痕跡を残さずに、そこから立ち去ることのできる人間などいない」
そう断言していたルンゲ警部が、全く痕跡のないヨハンの部屋を見て、ようやく怪物が実在する可能性に気づき始める。
オッフェンバッハに住んでいたリーベルト夫妻はもぬけの殻とのことだけれど、おそらく既に殺されていると思う。この後、遺体は発見されたんだろうか?


・ギーレンとなまえのないかいぶつ


ライヒワイン先生とギーレン、ニナ、ディーター、ロッテが合流。絵本を手掛かりに、ギーレンが二ナの記憶を引き出そうとする。
ここで引っ掛かったのは、ヨハンのメッセージ「僕を見て、僕を見て、僕の中の怪物がこんなに大きくなったよ」を知るギーレンが、『なまえのないかいぶつ』の台詞と類似していることになぜ気づかなかったのか、ということ。チェコ語の本だから内容まで理解していたのはニナと翻訳したロッテだけだった?


◇ ◇ ◇


ミュンヘン編を境にトーンダウンしたとよく言われるMONSTER。ストーリーの勢いだとか緊迫感においては確かにその通りなのかもしれない。でも、これ以降のヨハンは怪物ではなく記憶を求めてさまよう人間だったとみれば、物語の変遷も当然の流れだったと思う。


次はチェコのプラハ編。プラハ編と言えばグリマーさんやスークの登場、ヨハンの女装ですよ。なぜヨハンが女装していたか、それについても語っていきたいです。

[MONSTER]原作・キャラ語り | 12:13:29 | コメント(2) | ▲TOP
■ コメント

* このコメントは管理人のみ閲覧できます
2016-12-31 土 20:11:07 | | [ 編集]

* はじめまして、そしてあけましておめでとうございます!

>リーベルト夫妻を殺したのは本当にヨハンだったのでしょうか?

私はヨハンがやったと思っています。
時系列考察その1でも書きましたが、銃を使ってアンナに見つかったのは怪物ボナパルタが家に来て平静を欠いてしまったからだと思います。
ヨハンも実は完璧ではありません。リヒャルトに渡すウィスキーの瓶をスコッチではなくラッケにしたりとミスも犯します。

>ヨハンが死んでしまっていたら、結局アンナは怪物につかまりますよね。

一応「撃ったら逃げるんだ」とは言っていますね。あの時のヨハンはアンナと同じくらいに動揺していて、自分の死後アンナがどうなるかまでは冷静に考えられなかったんじゃないでしょうか。

>アンナが最初にリーベルト夫妻が死んでいるところを見たコマは犯罪者視点

これは1巻の警官視点なんですよね。そのままコピペしたのでそう見えてしまいますね。18巻ラストの回想でもヨハン視点のはずがアンナ視点の母親の横顔が登場するので、私もこの点には不満がありますw

あの時点のヨハンはすでにたくさんの人を殺している怪物ではあるけれど、やはりヨハンにとっての怪物とはフランツ・ボナパルタただ一人なんだと思います。
ヨハンは「僕が死んでも、君は僕で、僕は君」であると信じ、アンナに命を託したんじゃないでしょうか。
2017-01-01 日 18:43:31 | URL | どんぐり [ 編集]
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