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その2では登場人物の高里と広瀬に焦点を絞って
考察してみようと思います。
以下は十二国記シリーズを含むネタバレです。
未読の方はご注意ください。










■高里について



あまりの不幸ぶりに愕然とさせられた泰麒こと高里。
「風の海 迷宮の岸」を読んだ身からすれば、
「魔性の子」は怖いというよりも切ない想いばかりが強かったです。

「風の海」ではおとなしくも無邪気でかわいい子供だった泰麒も、
「魔性の子」では家族にさえも心を閉ざした無口な少年に。
彼をここまで変えてしまった蓬莱での生活に思いを馳せずには
いられないほどでした。
「お母さんに会いたい」と泣いていた健気な泰麒を知っているから、
「魔性の子」での母親の変わり様はただただ哀しい。

高里の纏う柔らかな雰囲気が印象的。
記憶や角をなくしているのにもかかわらず
「風の海」の時よりも遥かに麒麟らしい凛とした印象を与え、
周囲が騒げば騒ぐほど高里の異質な静けさが際立っていました。

それにしても、なんて運命だろう。

十二国ではもてはやされ、死とは一番程遠いところにいるはずの
麒麟が蓬莱(日本)ではその中心に否応なく置かれている。

慈悲の生き物が蓬莱にもたらしたのは「死」だった―――
そのあまりにも皮肉な運命にたまらない気持ちになりました。


高里の家族も悲惨です。
母親にとって「神隠し」から戻ってきた息子は
もはや別人だったのだろうし、弟なんて完全にとばっちりですからね…。




■広瀬について



私はこの作品、確か「図南の翼」の後に読んだような気がします。
泰麒編に関して言うと、「風の海 迷宮の岸」を読んだ後、
「黄昏の岸 暁の天」を読む前ですね。

だから「魔性の子」を読み始めた時、当然泰麒である高里を気にかけて
読んでいたのですが、いつの間にか広瀬に感情移入している自分に
気づきました。

自らを「故国喪失者」と呼び、自分の居るべき世界はここではないと
居場所を探し続けている青年。
初めて同胞と呼べる存在、高里と出会い、さらに厭世的になっていく
広瀬を痛いと感じずにいられませんでしたが、
その一方で彼に共鳴を受けたのも事実でした。

帰りたい。けれども自分と重ね合わせて見ていた高里のほうだけが
帰ることのできるその現実。

嫉妬。喪失感。裏切りへの怒り。そして汚い自分自身への絶望。
すべてに打ちのめされ一気に溢れ出したあの感情こそが
実は人間である証しであり、誰もが持ち得るものです。
それをさらけ出した彼に共感こそすれ、醜いとはとても思えない。

十二国記シリーズでの泰麒は主人公の一人ですが、
「魔性の子」は広瀬抜きで語れない物語であることは疑いようもありません。
高里=泰麒の十二国への帰還よりも何よりも、
広瀬の最後の絶望がこの物語のすべてと言っていいでしょう。

広瀬の慟哭は、ファンタジーなどフィクションを楽しみ
こんな世界に行ってみたいと願う読者のものでもあります。
ファンタジーである十二国記を発表する前に、
読者にこれほどまでに現実を突きつけてくれる作品を書いた小野さんには
脱帽するしかありません。



気になるのは広瀬のその後。

高里に関わったことですべてをなくしてしまった広瀬ですが、
ずっと帰るべき世界を夢見て生きていた彼は
その支えを失って初めて本当の意味で自分と向き合うことが
できると思うのです。

高里に置いて行かれると分かるあの瞬間まで
自分自身の醜い感情を認めることができず、
高里に「お前が王だと思う」となぜ言えないのか分からなかった広瀬。

しかし最後には、自分の中にも汚い部分があること、
永遠に分かり合えないと思っていた他人と自分が実は全く同じ存在で
あることを思い知るわけです。

確かに甘い夢は消え去った。
けれどもそれこそが現実を見つめ直すきっかけになると
言えないでしょうか。

すぐに気持ちを切り替え前向きに、というのは無理かもしれない。
それでも、時間が経ち、後藤先生の言葉や
高里が最後に残してくれた言葉を思い出した時。
事実に向き合い、現実と何とか折り合いをつけて生きていくと願っています。

あの後しばらくしてからロライマ山に行ったのかもしれませんね。
高里を吹っ切るため、
何より自分自身に決着をつけるために。



ここでちょっと萌え話を。
(マジメな語りをブチ壊してどうするよ自分…(;´Д`) )

P144で後藤先生が広瀬に「よう、美男子、生きてたか」と
謎の発言。

……広瀬って美男子なのか……?

これって教室での騒ぎを止めようとした広瀬に対しての
皮肉交じりの軽口なのかもしれませんが、
広瀬も何気に否定していないんですよね。

そんなわけで私の中では「広瀬は美形」です。
ええ、それはもう。

………ほんとにスミマセン。  




広瀬語りが妙に長くなってしまった……。
葛藤している人が好きなんですね、私。

泰麒は帰還してからが大変ですね。
高里がどれほどの苦境に立たされているか、
広瀬が知ることができればなぁ……。


この「魔性の子」の後に「黄昏の岸 暁の天」を読み、もう一度
この作品を読み返すと、また新たな発見と物語の巧みさに驚きます。
繰り返しますが、十二国記の前にこの作品を出したことに
感嘆のため息が出るばかりです。


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[エンタメ]十二国記・魔性の子 | 13:40:00 | コメント(4) | ▲TOP
■ コメント

* 私も小野不由美さん、十二国記、の大ファンです。もう何度読み返したか分かりません。共感できる考察をありがとうございます。
「魔性の子」を読んでずっと気になっていたのですが、そうコメントしてる方は誰もいなくて…。何処にも書いていないけれど、広瀬先生も実は胎果なのでしょうか。どう思われますか?。
あと、泰麒と李斎が慶から戴に戻ってからの続きの話がどうしても知りたいです!。まだまだ続刊が出たらいいのになぁ。。。。
2013-05-08 水 05:41:27 | URL | ebisio07023 [ 編集]

* ebisio07023さん、こんにちは!
共感できる考察と言っていただけて嬉しいです、ありがとうございます~。

>広瀬先生も実は胎果なのでしょうか。
その可能性もなくはないのでしょうが、私個人としては広瀬が胎果だと思っていません。
『魔性の子』はあくまで麒麟である高里とただの人間である広瀬の対比の物語だからです。
絶対に常世の世界に渡ることのできない広瀬の絶望が、魔性の子のラストの余韻をより深くしてるのだと思います。

>続きの話がどうしても知りたい
同感です!! 全国の十二国記ファンが今も変わらずに待ち望んでいますよね。

最近、新潮社から完全版として十二国記シリーズが新しく出版されていますが、今年の7月1日には新作も出るみたいですよ!
残念ながら短編集なので泰麒と李斎のその後の話ではなさそうですが、続刊を期待しましょう。
2013-05-09 木 22:57:21 | URL | どんぐり [ 編集]

* 返信ありがとうございます!。感激です!。この一週間で、アニメ版を再度見返し(これももう何度目ダロ…w)、今また「魔性の子」を読みはじめました~。「MONSTER」も大好きなので(もちろん、ANOTHER~まで全巻持ってます)、どんぐりさんの思い入れ深い解説が面白くて仕方ないし、強く強く共感しています。これからも楽しみにしています。頑張ってください。本当にありがとうございました!。
2013-05-11 土 18:07:45 | URL | ebisio07023 [ 編集]

* いえいえ、こちらこそコメントまでありがとうございます!
面白い作品は何度見返しても良いものですよね。

>「MONSTER」も大好きなので(もちろん、ANOTHER~まで全巻持ってます)
おおおそうなんですね!! 魔性の子もですがMONSTERの記事も読んでもらえて嬉しいです!
MONSTERへの愛が強すぎて「これ読んでる人にどん引きな文章になってないかな~;」と不安もあったので、そう言っていただけて書いてよかったと思えました。
いつブログにアップできるかはわからないんですが、今はヨハンの時系列の考察を練っているところです。もう少し先になりますが、アップした時にまた読んでもらえると幸いです~。
2013-05-12 日 19:59:07 | URL | どんぐり [ 編集]
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